「減価償却」×「木造中古アパート投資」で効率的な節税対策を
富裕層にとって有効な節税対策の手段として不動産投資が挙げられる。とくに木造中古アパート投資は、建物の減価償却費を計上することで所得税等の負担を大幅に軽減できる可能性がある。減価償却を活用した効率的な節税対策について、Jグランド株式会社ソリューションセンター・センター長の磯ヶ谷壮彦氏に聞いた。
不動産投資における「減価償却」のメリットとは
「減価償却」とは、事業活動のなかで高額な設備投資をした際、その経費を数年に分けて計上する会計手法です。たとえば、不動産投資家が年間250万円の家賃収入が得られるオーナーチェンジ物件を5,000万円で購入したとします。表面利回り5%と稼げる物件ではあるものの、この購入代金を1年で全額経費計上してしまうと大幅赤字になってしまいます。そこで、減価償却による会計処理が有効となるのです。
減価償却の分割回数(年数)は購入した投資用不動産の「耐用年数」によって変わります。新築の場合、鉄筋コンクリート造マンションでは47年、木造アパートでは22年が法的に定められた耐用年数です。そして償却率(定額法)は47年で2.2%、22年で4.6%です。これらの数値から、新築の鉄筋コンクリート造マンション、新築の木造アパートをそれぞれ5,000万円で購入した場合の減価償却費を比較してみましょう。
【減価償却費の比較】
・新築鉄筋コンクリート造マンション:購入価格5,000万円×償却率2.2%=110万円
・新築木造アパート:購入価格5,000万円×償却率4.6%=230万円
このように、購入初年度の減価償却費は新築の鉄筋コンクリート造マンションで110万円、新築の木造アパートで230万円であることがわかります。
減価償却を効率的に活用するキーワードは「中古」「木造」
ここでひとつ疑問が生まれます。同じ5,000万円で購入した物件なのに、なぜ減価償却費に大きな差が生まれるのでしょう? 答えは簡単です。木造アパートの耐用年数は鉄筋コンクリート造マンションより短いからです。
減価償却はいわば「セルフローン」のようなものです。投資額を「節税」という形で短期回収できれば、耐用年数満了後はそのまま賃貸経営を続けるもよし、またはオーナーチェンジ物件として売却するもよし、所有者の自由にできます。
不動産を購入するなら「新築」と考える人が多いことでしょう。とくに不動産投資初心者であれば、修繕の必要がないという理由からその傾向がより高まります。しかし新築は耐用年数のスタート地点であり、すなわち減価償却の旨味がもっとも少ないタイミングといっても過言ではありません。
より効率的な節税効果を望むのであれば「木造」の「中古」物件が狙い目です。木造アパートの耐用年数は22年ですが、築10年であれば耐用年数は12年(22年-10年)と短くなり、償却率も8.4%と高くなります。5,000万円の物件であれば初年度の減価償却費は420万円(5,000万円×8.4%)になります。
耐用年数を満了した物件であっても減価償却は可能です。築22年以上の木造アパートを購入して経費計上する場合は、「耐用年数4年(償却率25%)」の物件として減価償却して問題ないとされています。5,000万円の物件であれば初年度の減価償却費は1,250万円(5,000万円×25%)になります。
富裕層こそ中古アパート投資を実践すべき
企業に勤めるサラリーマンの方々は「所得税」について意識することは少ないかもしれません。ご自分が支払っている所得税がどのように算出されたかについてもあまりお調べになったことはないでしょう。
所得税は収入額によって税率が異なり、収入が高ければ高いほどその掛率も高くなります。最高は45%(年収4,000万円以上)で、仮に年収4,000万円だとすると、その所得税額は1,500万円超((4,000万円-控除額約480万円)×45%)に上ります。
もし会社勤務と並行して不動産投資を行えば、購入不動産の減価償却費で生じた「マイナス」を給与所得から相殺することもできます(損益通算)。税金という名目で莫大な資産を搾取されている富裕層の方々にこそ、減価償却を活用した中古アパート投資を実践していただきたいものです。
耐用年数満了後を見据えた出口対策が重要
前項において、「耐用年数満了後は賃貸経営を続けるもよし…」としましたが、耐用年数を満了した物件、またはすでに満了した段階で購入した所有5年目以降の物件は、節税効果が一気に下がることも忘れてはいけません。
前年まで数百万円単位で計上できていた減価償却費が一気にゼロになれば、その分利益が出てしまい、結果として所得税が上がってしまいます。そのような事態に陥らないよう、耐用年数満了前から対策を練っておく必要があります。
「売却」を考えるのであれば、早期に建物の修繕計画や家賃設定の見直しを考えましょう。建物の老朽化が著しかったり、家賃が低く利回りが悪くては買い手が付かず、希望価格で売却することが難しくなります。
まとめ
不動産購入経費を数年に分けて経費計上できる「減価償却」について説明しました。不動産投資でより効率的な節税効果を望むのであれば、耐用年数の短い物件(「新築」より「中古」、「鉄筋コンクリート造マンション」より「木造」)を選べば、減価償却による節税効果が望めます。ただし、減価償却期間を満了した物件は節税効果が一気に下がるので、事前に出口対策を立てておくことも必要です。
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